古典の読み方

まだ読んでいる途中ですが、植村邦彦著の『隠された奴隷制』(集英社新書、880円+税、2019年)は、たいへん面白いです。帯広告に、「自由」に働く 私たちは なぜ「奴隷」に すぎないのか? と衝撃的なコピーが踊っていて何かキワモノ感が出ていますが、中身はいたってアカデミックな社会思想史の本です。奴隷制を手掛かりに近代思想の流れを見せてくれます。何がアカデミックかというと、それぞれの思想家の古典の原本にあたり、当時の社会状況や思想家個人の交流体験まで追いかけて読者に提示してくれるからです。普段の生活に追われる読者は、こうした知的作業を行う時間も能力もありません。だから、唐突にも思える奴隷制の存在が思想家に与えた影響を考える視座を得ることもありません。古典の読み方を深くしてくれ、一層思想家個人に対する理解も深めてくれる良質なガイドに出会えたことを感謝できます。外食や車での移動を控えてこうした本に接することがぜいたくです。