皇軍兵士の置かれた実態をさらす良書

昨日買った吉田裕著『日本軍兵士』(中公新書、820円+税、2017年)は、その日のうちに2時間余りで読了しました。国力が疲弊する中で、装備も兵士の身体も貧弱になり、精神的損傷の実態も明らかにされています。出撃する航空機搭乗員に対して繰り返し覚せい剤が使用された証言も載っています。こうした分野の研究は、著者自身が述べるように戦後のある時期まで空白に近い状況でしたし、年数が経つほどに今度は当事者や資料が失われることとなり、困難な環境になっています。私が手にした本の奥付を見ると、2017年12月の初版以来、今年2月で15版を重ねていますから、皇軍兵士の置かれた真実を知りたいという読者はかなりいたことがわかります。もちろん、装備や武器の性能が優れていたら、それでいいというものではありません。戦争の渦中に置かれれば、誰しもが不幸になる史実こそを知るべきだと思います。