農業の起源

今読んでいる『若い読者のための第三のチンパンジー』には、さまざまな知見が詰まっていて楽しい著作です。人間が他の動物と異なるのは、言葉の使用や芸術がありますが、農業もその一つです。人間以外では、ハキリアリが地下でキノコを栽培して食料としている例があります。しかし、なぜ農業が発達してきたかというと、それは地理的な、つまり居住環境の違いではないかとみられています。数千年前の古代ギリシャやトルコの遺骨を調べた研究によると、氷河期のこの地方に住んでいた狩猟採集民の平均身長は、男性が178センチ、女性が168センチだったのですが、農業が始まるようになる紀元前4000年ごろには、男性で平均160センチ、女性は155センチへと一気に低くなっていることがわかっています。現代のギリシャ人やトルコ人よりも、健康な狩猟採集民の祖先の平均身長が高いのです。現代の狩猟採集民であるブッシュマンの一人は、なぜ農業に手を出さなかったのかと問われて、「モンゴンゴの実が山のようになっているのに、なんで植えなきゃならないんだ」と答えています。人間の歴史を振り返ると、恵まれているために農業に乗り出さなかった例がある一方で、農業の発達があったために、階級対立や大量殺りく、環境破壊といった、人間社会の弊害が起こったともいえます。だからといって、いまさら農業を捨て去ることはできないわけですが、根本に立ち戻って考えてみることはおもしろいと言えます。話は飛びますが、2020年の東京に北朝鮮の首領を招待する考えはないのでしょうか。あるいは、首領本人がたとえば射撃の選手として出場するためにやって来ることは考えられないでしょうか。そんなメディアで報じられないことを想定してみる余力も必要ではないかと思います。