統合と棄民の歴史

今読み進めている遠藤正敬著『戸籍と無戸籍』(人文書院、4200円+税、2017年)は、事前予想以上にたいへん面白い著作です。権力が領民を保護する一方、税や兵力確保のためには歴史的にも領民を登録管理する台帳が必要でした。これが日本では戸籍となります。戸籍を持たない者は犯罪者予備軍として扱われた歴史もある一方で、権力の怠慢やエゴで戸籍を奪った過去もあります。今でこそ戸籍を持つことが国民の証となっていますが、元植民地出身者については、国民でありながら戸籍は別扱いとしていたがために、戦後は日本人として保護されることはなくなりました。その他、海外在住の日本人の戸籍をめぐる扱いなど興味深い研究が記録されています。考察対象は、7世紀ごろから現代まで、近隣アジアの制度も含めてあり、仕事として戸籍に接する立場の者としては、初めて知ることばかりでした。戦前は民生委員の前身の方面委員が戸籍整理事業に携わっていたことも知り、その点も係わりを感じました。また、地籍というか不動産登記も国民の任意性によるところがありますが、戸籍が徴兵と絡んでいた時代もあり、国民の側から届出にさまざまな対応があった実例にたくましさも覚えました。