無知と無恥

あるホテルの全客室に、日中戦争中の南京事件について否定的な書籍が置かれていることが、中国で問題視され批判が相次いでいます。この系列ホテルには昨年11月に私も宿泊したことがあり、問題の書籍の配置には気づいていました。一読すると、ホテル経営者である著者の事実を見ずに自己の妄想だけで主張を展開する内容に、苦笑せざるを得ませんでした。ホテル事業で一定の成功を収めた人物にもかかわらず、その思考能力は幼稚で、わざわざ宿泊客に自分の無知さをさらす無恥な人間であるという愚を犯しているとしか思えませんでした。南京事件否定論者は中国側の主張する死者数が過大であることをもってして、事件自体がなかったということにしたがっています。しかし、これはまったく論理が破たんした話です。死者数にかかわらず虐殺が起きたことからどこの国民であれ目をそらしてはならないのです。よく中国に対して日本政府は法の支配や国際法の順守ということを求めます。であるなら、どういう事実があったかということが、出発点になります。事件の一部分だけをとらえて全体を歪めた言動は、法の支配や国際法の順守を理解できる知性をもった人物とみなされないのが常識です。