それでも、日本人は「戦争」を選んだ

加藤陽子著『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫、750円+税、2016年)をごく短期間に読み終えました。歴史のナビゲーターとしてのお手並みに心地よい満足感を抱きました。こうした仕事ぶりに感動できる歴史家としては、他に山室信一氏を覚えるぐらいです。著書の中では改めて知る事実が多々ありました。たとえば、重要な方針があまり議論されないまま最高決定されてきたこと。満蒙開拓移民がどのようにして募られて悲劇を起こしたかということ。陸軍が表向きは国民受けする改革者として振る舞いながら、実のところは別の狙いを達成するべく動いていたこと。国民を満足な食糧を賄う見込みもなく、軍隊もまた戦争へ突き進んだことなど。特に国民の心理を分断させ、誤った国策に導かれることがあることは、現代においても最も警戒しなければならないことだと考えます。そしてそれは国柄を問わず力を保持したい勢力が取りたがる手法です。分かりやすい敵が仕立て上げられるときこそ、裏に何があるのか、クールに考えることが重要であることを痛感します。