4万年前からの視点

斎藤成也著『日本列島人の歴史』(岩波ジュニア新書、840円+税、2015年)を昨日から読んでいます。中高生向けの新書という触れ込みですが、どうしてどうして十分大人向けの良書です。ヘイトスピーチを繰り広げながら自らを差別主義者ではないという錯乱した言辞をネット上で見かけることがありますが、そういうおバカにはぜひ読んでもらいたいものですが、岩波書店からの出版物というだけで、逃げ回られるのがオチなのが惜しく思います。
さて、前置きが長くなりましたが、著者はヒトゲノムの研究者です。約4万年前頃から日本列島にヒトが生息し始めたらしいのですが、その日本列島人の来歴をヒトゲノムを手がかりに解き明かしています。ですが、本書の展開はそれに留まらず、現代から過去へと遡り、4万年前だけではなく4万年間の変化を見渡します。そのなかでは、琉球もアイヌも弥生も縄文も登場してくる壮大な絵巻を呈します。
日頃、現代政治の思想を考えるには、だいたい150年前から流れを紐解いていけば良いと考えていましたが、さにあらず、昨今の国際問題を踏まえると、せめて東アジアだけでいっても4万年前からの視点が必要だと感じます。