理解と敬愛の連鎖に転じよう

10年近く前に読んだ田中優氏の『戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方 エコとピースのオルタナティブ』(合同出版)は、個人のお金がどう世界を回ってどんな社会をもたらしているかを易しく解説した本です。それによると、元々地方のカネの集まりが国家予算となって中央の公共工事をありがたがる皮肉(郵貯など)、アメリカの世界覇権を支えているのは日本国民という皮肉(銀行預金)、農家が農産物輸入自由化をもたらしているという皮肉(農協)などが見てとれます。
残念ながらこの構造は変わりなく、この間に取り返しのつかない環境破壊を引き起こした原発事故があったり、世界各地で紛争が続いていたりします。この際、財務省は米国債を売って以下の事業に貢献してみてはどうだろうか。原発や武器を輸出するよりは断然世界から歓迎されるはずです。
・途上国の債務をなくす 4010億ドル
・世界中の兵器を廃棄する 1720億ドル
・世界中の飢餓に苦しむ約8億人の1年分の食糧 980億ドル
・世界のすべての埋まっている地雷の撤去 330億ドル
・アフガニスタンの復興 250億ドル
・世界中の女性の出産にかかわる保健衛生 120億ドル
・世界中の人々に安全な飲み水と下水道設備を提供 90億ドル
・世界中の砂漠化の防止 87億ドル
・世界中の人々に基礎的な教育 60億ドル
・すべての地雷被害者に義足などを贈る 3億ドル
・世界中の約2000万人の難民支援用テントや毛布を援助 1億ドル
・世界中の子供達をビタミン不足による失明から救う 0.2億ドル
やはり10年近く前に読んだ『日露戦争の世紀』(岩波新書)の著者・山室信一著氏が、同書のあとがきで「憤怒と侮蔑の連鎖が、理解と敬愛の連鎖に転じる日の、一刻も早からんことを祈りつつ」と記しています。この思いに応えたいものです。