犬の名誉のために言葉は正しく使いたい

NHK経営委員でもある放送作家の百田尚樹氏が、先頃の東京都知事選挙の応援演説の中で、他の候補者を「人間のクズ」という言葉を放ちました。この言葉は、北朝鮮の権力闘争の中で、ナンバー2粛清に際して「犬以下の」という表現を伴って使用されたので、余計に印象に残っています。

特に後段の表現を最初耳にしたとき、引き合いに出された「犬」にとってずいぶんと迷惑な話だなという思いを当初抱きましたが、案外「犬」はルールが守れる賢い生き物ですので、後で合点がいった次第です。「犬」の名誉のために付言すると、ルールというは、文字通り統治の意味を含みますから、ルールを守るあるいは守れるというのは、政治に携わる者には絶対不可欠の資質です。

となれば、先の作家氏は、後日あれは言いすぎだったと述べていますが、それでは反省が足りません。職業的な言葉の使い手としては、明らかに「犬以下の」に対してのみ、「人間のクズ」と正しく発するべきでした。今からでも遅くはないので、時の政権の思慮で憲法の解釈は改変できるのだという意味のことを国会で答える、つまり自分には統治能力がないと発言している、「犬以下の」お友達に対して使ってみたら、真の反省を成したと作家としての名誉を回復できるかもしれません。

写真中央は筆者本人です。左右の人物は記事と関係ありません。