月別アーカイブ: 2019年8月

スタートアップ支援

今月27日に福岡市の創業支援施設内に開業ワンストップセンターがオープンしたとの報道を目にしました。行政書士が案内人となってテレビ電話を利用して公証役場とを結び電子定款認証に際しての本人確認を支援している模様が写真掲載されていました。法人設立にあたって最大6カ所へ訪問しなければならないところが、このセンター1カ所で手続きが完了するそうです。福岡市ではこのセンターの運営に年間750万円の予算を組んだということでした。このテレビ電話にしてもあまり一般には使われていないシステムですので、どの程度普及するのかわかりませんが、とにかく創業手続きのハードルを自治体として下げようと動いているのは評価できます。市外の創業者も無料で使えるそうなので、ぜひ見学したいものです。福岡市の創業支援の取り組みとしては、外国人が起業準備するための特定活動の在留期間が1年間申請できるというものもあります。この分野も日ごろ行政書士が支援できるものですが、起業プラス海外連携という方向をもつ福岡市は進んでいるなあと思います。

知恵者はいないのか

日韓問題をめぐるTVコメンテーターの発言の多くを聴いていると、場当たり的な発言が多く、報道の後追いで事態を大げさに煽ることで存在感を高める手合いがほとんどです。中には一度謝罪したら後はどうでもいいみたいな短絡的発言もあり、国家間の付き合いだけでなく生活者の付き合いでもそれは破たんするだろうという思慮のなさを露呈しています。放っておくしかない的な発言にいたっては、自ら無能である旨を示しているのにほかなりません。その場の一時の感情ではなく、歴史や哲学、精神分析、心理学、その他の知恵を借りて対話することが必要です。無用な対立でさまざまな利益を失わさせていること自体が、最大の裏切りです。

伝統は疑ったがいい

新卒一括採用、定期人事異動、定年制などの原型は明治時代の官庁から生まれたことが、小熊英二著の『日本社会のしくみ』に書かれています。つまり、雇用慣行は、せいぜい150年の伝統しかないわけです。なんでも伝統を言い訳にされるときには、疑ってみたがいいと思います。

低学歴化は憂いたい

生れた環境によって教育格差がある一方で、日本の場合、世界では相対的に低学歴化の傾向にあることも懸念材料になっています。官庁にしても会社にしても入学した大学名による人材獲得競争になっていて、大学で何を学んだのかは重視されていません。修士号や博士号を取得してもそれが生かされる場が少ないのは、受け入れる組織の能力自体の低さがあるのかもしれません。ある組織内の経験が他の組織内では評価されないというのも変な話です。それがために、日本における就職指導は、新卒で入社したら、定年まで長く働くのが得ということになってしまっています。実際のところ大卒で中小企業に勤めるよりも、高卒で大企業に定年まで勤めた方が、生涯賃金は高いし、年金の所得代替率も充実しているかもしれません。ですが、低学歴化に危機感を抱かなければ、総体として社会は疲弊化していく気がします。

売買と賃貸借に関する民法改正

昨日は他の士業団体主催の研修に参加しました。テーマは民法改正とあって関心が高く、当初の定員400名を上回る600名近くの出席者がありました。こちらの団体は、会員外にも門戸を開いており、前にも参加したことがありました。今年は自身の所属団体の研修責任者を務めていることもあり、運営の視点からも参考になりました。
肝心の民法改正の背景として法律そのものが国民に分かりにくくなっており、これに120年間積み上げられてきた通説・判例を条文に書き込み、条文を読めば国民に分かってもらえるようにするというのがありました。そういえばそうだなと思います。法律が法律を理解するプロだけのためにあり、本来守られるべき国民にとって分かりにくいものであるということを当然のこととして受け入れてしまっているのは良くないことだと思いました。
写真は、記事とは関係ありません。

親近感を持てる同世代の著者の一人

小熊英二氏の著書『日本のしくみ』(講談社現代新書、1300+税、2019年)を初めて読みます。同氏の論考は、これまでよく新聞で目にしていました。さまざまな構造分析に秀でていて地頭がいい方だなあという印象をもっています。以前、水俣病センター相思社を訪ねてこられたとき、そのまま維持会員登録をしていただいたと聞いています。研究者である前に普通の生活感覚を持っておられる人だと思います。その印象が強いのは、同氏がかつて勤務されていた岩波書店が出している月刊誌の『世界』で、自身の父親の半生を描いた連載を読んだことがあったからです。この連載は『生きて帰ってきた男』として書籍化されていますが、読んで戦後の人々の暮らしの雰囲気が伝わり、懐かしさを覚えます。もっとも、同氏の父親は抑留体験を持ち、大学職員やスポーツ店経営の経験があります。東京郊外に住み、家庭を持ちます。二人の息子のうち、同氏の兄にあたる長男は中学時代に亡くす不遇もあります。何がいいたいかといえば、ごく普通の生活者の体験が社会のあり方を考える際に不可欠なのではないかと思います。最初からいわゆる勝ち組、それも本人の能力ではなくて何の苦労もない生活に浸りきっていて、社会をどう変えていくべきか考えつくだろうかと思います。

5世紀前半頃の古墳出土品が物語るもの

本日1日限定で特別公開された、県内最大級の古墳である長目塚古墳の出土品を拝見してきました。会場は昨年12月に復旧工事が完了した阿蘇神社の斎館です。というか、70年前の発掘調査で見つかった出土品を収蔵しているのは、阿蘇神社です。今年3月にそれらの出土品が熊本県重要文化財に指定されたということでした。埋葬されたのは、35歳くらいの女性で、当時の豪族の阿蘇氏の一族とみられています。勾玉、ガラス玉、鏡、鉄製品などが出土していますが、銘文とかはありません。須恵器といった土器文化の時代であることもうかがえます。考古学は科学ですから、これらの物証だけでいっても、かたや祖先を神話の世界のおとぎ話からもってきている神社の立場は、今度の公開とどう両立させているのか、たいへん興味深いものがありました。

移民に選ばれる国といえるか

翁邦雄著『移民とAIは日本を変えるか』(慶應義塾大学出版会、2000円+税、2019年)を読みました。日本における人口減少は確定的未来ではなく、国民による選択の余地が大きいと著者は言います。移民の増加は人口ピラミッドの姿に大きな影響を与えつつあると見ています。ちなみに政府はしばしば移民政策はとらないとケムにまきますが、国際的定義によれば3カ月以上の移住を指しますので、技能実習生も移民として捉えます。そこで、移民に選ばれる国としての受け入れ体制が課題になります。統合ではなく包摂という考え方を示していました。一部に治安悪化を心配する向きがありますが、初めから犯罪目的で入国する外国人は少なく、劣悪な職場から逃れて生活困窮の結果、そしてしばしば日本語能力も貧弱なまま罪を犯したケースの多さに目を向けなくてはならないと思います。ドイツの移民政策やベトナムの国民性の情報も参考になりました。AIの進化については労働者の仕事を一部代替していく省力化で労働需要を一部緩和し、かつ労働需要を高賃金と低賃金とへ二極化させる可能性が高いと著者は言います。ただし、中期的視野で人口減少を相殺し、大失業を発生させる可能性は小さく、むしろ人口減少圧力がまさることが予想されると見ています。結果として移民への期待は今後も高まるというわけです。繰り返しになりますが、問題は移民に選ばれる国であるかどうかを考えなくてはなりません。

教育格差がもたらすもの

松岡亮二著の『教育格差』(ちくま新書、1000円+税、2019年)を昨日一気読みしました。信頼性の高い統計情報に基づく説得力のある論証は、読み進めやすい思いがしました。ある程度実感していることですが、教育格差は小学校入学前から存在し、小中高と進むほどに拡大しているという事実が明らかにされています。格差の要因は、親の学歴や文化資本、地域、学校環境となっています。社会経済的地位が高い家庭に育った子どもは、将来、やはり社会経済的地位が高い親になるということが実証されています。つまり格差の再生産が続くというわけです。皮肉なことにそうした実態を知り得るのは、社会経済的地位が高い家庭となりがちなので、たまたまそれが低い家庭に生まれた子どもは、高い教育を受ける可能性を減らされていることになります。著者の考えは、このように子どもの可能性が殺されるのを社会の損失だとしています。たとえ、一学年の1%でもその可能性を救えれば、1万2000人の子どもを救うことになり、社会の平均値が上がることは、全体の利益になると考えています。教育格差があるということは、教員や私のような専門職にも地域格差があることを示しています。まずは、根拠のある事実を認めて少しでも改善することを続けなくてはなりません。

歴史のイロハ

昨日は、所属団体の研修受講で帰化申請と特定技能について学びました。前者については進めていくことが重要だと思います。しかし、後者についてはこの先不透明な制度だと考えています。社会を支えてくれる貴重な人材(労働者)として受け入れるだけでなく、社会に定着して共に生きる住民(生活者)として受け入れるべきだと思います。つい2000年前までは、文字すらもたなかった日本(その頃は日本という成り立ちもなかったわけですが)が今日のような形になったのも海外からいろんな人材や文化・技術を取り入れてきたからこそです。ここを無視して伝統だのいっても底が浅い歴史認識を示すことにほかなりません。もっとも移民で成り立っている米国でも分断傾向が見受けられるのは、知的劣化としか言いようがありません。

安易な仮払い利用は危険

今週末に地元でエンディングノート活用の講話を行います。その中で、相続法の改正についても少し話をします。7月1日から施行になった相続制度の一つとして遺産分割前の仮払いがありますが、故人の借金が多い場合、安易に利用してしまうと、後で「相続放棄」ができないことがあるので、慎重に考えないと危険です。
相続が開始した場合、相続人は次の三つのうちのいずれかを選択できます。その選択は、自身が相続人であると知ったときから3ヶ月以内に行う必要がありますので、その見極めがつかない時期に仮払いを利用すると、単純承認したとみなされかねない危険があります。
1.相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ「単純承認」
2.相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない「相続放棄」
3.被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ「限定承認」
※相続人が、2の「相続放棄」又は3の「限定承認」をするには、家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。そして、これは 自身が相続人であると知ったときから3ヶ月以内に「相続放棄」や「限定承認」の手続きを取らなければ、自動的に「単純承認」となります。「限定承認」をする場合には、相続人となった人全員が共同で申し立てすることになります。

電子政府は推進できたか

4期8年間にわたって委嘱されていた総務省電子政府推進員を先日退任しました。行政手続きにおける情報システムは、この間、激しい盛衰があり、電子政府を推進するのはたいへん難しいと感じました。電子証明書が収納されているマイナンバーカードを利用するのは年間何回あるだろうかと思います。いずれ健康保険証も組み込まれるとのことですが、便利なようで個人の健康状態が監視されているようで気味の悪さも感じます。もっとも健康保険も加入しているだけで医療機関のお世話になることはここ最近はまったくないので、それが続けられるようにしたいものです。

久々に全国大会へ参加予定

全国大会といってもウエイトリフティング競技審判としての参加ですが、かごしま国体リハーサル大会として11月22~23日に開かれるレディースカップ全日本女子選抜選手権に出ます。階級や順位決定が変わりましたし、進行方法も変わりました。そうでなくてもミスはアスリートへ迷惑をかけるので、審判はいつも緊張するものです。

水俣への旅のご案内

女性対象の旅のご案内を、水俣病資料館語り部の会事務長さんからいただきましたので、紹介します。旅の案内人は、地元・水俣の女性たちです。水俣のいろんな魅力に触れられそうです。申し込みは、リーフレットに掲載されているQRコードからお願いします。

いい講師とは

本日は所属団体の研修でした。講師が言われるには、いい講師とは受講者にもっと勉強しようという意欲を湧かせることだそうです。その意味では、本日のテーマが相続法の改正だったのですが、さまざまな課題が見つかり、専門家としてどうすべきか考えさせられる点がありました。たとえば、遺産分割前の仮払いが認められるようになりましたが、被相続人の借金が多い相続人がヘタにこれを使うと、相続を承認したことになり、あとで相続放棄ができず借金を背負ってしまう危険性があります。もう一つ相続人ではない長男の嫁の特別寄与料の請求が認められるようになりましたが、これは6親等以内の血族や3親等以内の姻族に限られます。事実婚や同性婚のパート―ナーが請求することはできません。法律の落とし穴・傘の外を知らないでお客に説明すると迷惑をかけてしまいます。来週は自身が講師として話す機会があるので役立てたいと思います。

8月も早や後半

台風だ、お盆だといっているあいだに8月も早や後半に入りました。いろんな行事の予定がどんどん入ってきています。読書は、また『〈自閉症学〉のすすめ』に戻っています。複数の著者からなる本ですが、自閉症の子どもを育てた経験をもつ著者の記述もあり、収穫の多い書です。

規範の始まり

東京国立博物館で開催中の特別展「三国志」が10月には九州国立博物館へやってきます。大いに関心はあるのですが、とりあえず古典中国の研究者である渡邉義浩氏による『漢帝国』(中公新書、880円+税、2019年)を読んでいます。帝国の規範となる『史記』などの書物の存在を面白く思いました。皇帝を諫める存在でもあり、忖度される存在でもあり、現在の権力と憲法・法律・公文書との関係に近しいものを感じました。氏族制を排除する考え方もあり、天子と皇帝の据え方についての考え方も面白く読みました。漢帝国の時代の思考と行動がそのまま現代の中国に影響しているとは思いませんが、文化的背景で引きずる点はあるかもしれません。西洋哲学と古典中国のどちらの文化からも、内政と外政へのうまい制御の仕方が学べるはずです。素養として必要だと思います。

皇軍兵士の置かれた実態をさらす良書

昨日買った吉田裕著『日本軍兵士』(中公新書、820円+税、2017年)は、その日のうちに2時間余りで読了しました。国力が疲弊する中で、装備も兵士の身体も貧弱になり、精神的損傷の実態も明らかにされています。出撃する航空機搭乗員に対して繰り返し覚せい剤が使用された証言も載っています。こうした分野の研究は、著者自身が述べるように戦後のある時期まで空白に近い状況でしたし、年数が経つほどに今度は当事者や資料が失われることとなり、困難な環境になっています。私が手にした本の奥付を見ると、2017年12月の初版以来、今年2月で15版を重ねていますから、皇軍兵士の置かれた真実を知りたいという読者はかなりいたことがわかります。もちろん、装備や武器の性能が優れていたら、それでいいというものではありません。戦争の渦中に置かれれば、誰しもが不幸になる史実こそを知るべきだと思います。

お盆の読書計画

『〈自閉症学〉のすすめ』の読書は、遅々として進みません。いろんな分野の学問を俯瞰的に眺めることができるので、発見の多い本です。味わいながら読み進めることとします。こんなときは、別の新書本を間に入れることもあります。吉田裕著『日本軍兵士』(中公新書、820円+税、2017年)と渡邉義浩著『漢帝国』(中公新書、880円+税、2019年)を本日買い求めました。いずれの著者もごく最近新聞やTVに出ていたからです。

若い知人の訃報に接して

市内の介護施設入所者訪問の翌日、4年前に合同会社設立のお手伝いをさせてもらった30代の経営者の方の訃報に接しました。地域に根差したリハビリのデイサービス事業を起こされた方でした。法人設立の相談に乗らせていただくときは、依頼者の志を聴かせていただきます。それだけに志半ばで旅立たれた故人の思いが残ります。事業所は異なっても、故人の意をくんだ介護サービスが地元の施設で受けられればいいなと思います。さまざまな施設を訪問する機会が多いので、直接間接に資質が上がるよう提言したいと思います。